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UTokyo Day at Princeton University

東京大学・プリンストン大学の戦略的パートナーシップ締結の記念イベント「UTokyo Day」が、2014年10月23日にプリンストン大学にて開催されました。

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イベントが開催されたのは、食堂でおなじみのFrist Campus centerの隣にある、Jones Hallという建物でした。アインシュタインが居室として使っていたという部屋もある、素敵な場所なんです。

しかも!この日はしとしと雨降り。雨で黒っぽくなった石造りの建物に、赤や黄色の紅葉がよく映えて、しっとりとした風情ある景観になりました。寒かったけど。

あぁ、しかし、この日のイベント会場には、暖かい空気が満ち満ちて、寒さなんて吹き飛ばされてしまいました。

 

まずは真面目にイベントレポート

イベントでは、締結に関わった役員と研究者の先生方が一堂に会し、スピーチや研究報告がなされました。

プリンストン大学Eisgruber学長のスピーチでは、東京大学との関わりが古くからあったことが触れられました。プリンストン大学のEd Turner教授や東京大学の須藤靖教授などのお名前を挙げながら、これまで様々な研究者たちの努力で両大学のつながりが続けられていたことが話されました。天文学の分野で共同研究が始まったのは、なんと30年前のことだそうです!

こんな風に学長自らが、具体的な例を交えつつ東京大学との関わりを紹介することに少なからず驚き、プリンストン大学の心からの歓迎の気持ちを感じました。

東京大学からは、濱田総長が東京大学の学事歴やカリキュラムに関する大胆な変更について話し、江川理事からはその詳しい説明や、それ以外の国際化に向けた取り組みの紹介がありました。世界で活躍するタフな東大生を育てる準備が、着々と進められていることを感じました。

ブレークタイムを挟んで、本パートナーシップが支援する3つの共同研究・教育プロジェクトについての進行状況報告もありました。1つのプロジェクトごとに、東京大学の研究者とプリンストン大学の研究者が一人ずつ分担して報告をしました。

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【第一回採択プロジェクト 3 件より進行状況報告】

 

代表者 東京大学/プリンストン大学

プロジェクト

  

染谷 隆夫教授(工学系研究科)/Prof.   James Sturm (Inst. for the S & T of Materials)

Sensing   Skins, from Molecules to Smart Cities

 

吉田 直紀教授(理学系研究科)/Prof.   Jenny Greene (Dept. of Astrophysical Sciences)

The   Todai-Princeton Astrophysics Collaboration

 

佐藤 仁教授(東洋文化研究所)/Prof.   David Leheny
  (East Asian Studies Dept.)

Toward   Immersive Asian Studies:
  A Collaborative Undergraduate Exchange Program for the Todai- Princeton   Partnership

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(1)染谷隆夫教授(東大)、Prof. James Sturm(プリンストン大)のプロジェクトは、「Sensing Skin」という、1マイクロメートルのものすごい薄くて軽いフィルム上作られた電子回路の開発でした。羽毛よりも軽く、くしゃくしゃにしても大丈夫。その特性を活かして、人の手の甲や、建物などに貼り付けることができます。東京大学のロボットスキンの研究と、プリンストン大学の伸縮する金属の研究が出会って生まれた新しい技術だそうです。1マイクロメートルとは、1000分の1ミリメートルのこと。髪の毛の太さが大体0.1ミリメートルなので、髪の毛の100分の1くらい、ということでしょうか。薄いな。こんな所に緻密な(しかも伸び縮みする!)電子回路が構築できるとは。

(2)一方、吉田直紀教授(東大)、Prof. Jenny Greeneが挑戦しているのは、ものすごく大きいもの、ずばり、宇宙の国勢調査!これまでにない大規模な観測を行い、宇宙全体の性質を統計的に調査します。一つ一つの星や銀河ではなく、全体を見渡して初めて見えるものとは何でしょう。それは、宇宙そのものの歴史です。遠くを見れば見るほど過去の宇宙の姿が見えるので、広く&遠くまで観測することによって、宇宙全体がどんな風に膨張してきたかを調べ、そこから、宇宙全体を支配するルールを見出そうとしているのです。このプロジェクトでは、日本の技術が結集したハワイのすばる望遠鏡が使われています。

(3)佐藤仁准教授(東大)とProf. David Leheny(プリンストン大)の教育プロジェクトでは、「immersive(没入した)」なパートナーシップを実現するため、教員が互いの大学で授業を行うという取り組みが行われています。これには、佐藤先生の実体験が元にあります。以前プリンストン大学に出張にきた時、プリンストン大学がどのように機能しているのかは、ただ滞在しただけの時にはわからず、ある時プリセプト(講義とは別に、小グループで議論をする授業)に参加させてもらって初めて理解できたと感じたそうです。深いパートナーシップ実現の鍵は「teaching」である、ということでした。この二人は、まるで漫才コンビのように軽妙なトークで、息もぴったり!あぁ、immersiveな交流がなされているんだなぁ、という感じでした。

会場ではそのまま、より深いパートナーシップの実現や日本の学生がもっと積極的に発言するにはどうしたらよいかなどの議論が始まり、活発な意見交換がなされました。

 

 

イベント以外の時間のレポート

ブレークタイムや、イベント終了後の会場は、さらにフレンドリーな雰囲気でした!

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左から、東京大学から本パートナーシップにより、Astrophysical Sciences(宇宙物理)に留学している村田君と高木君、そしてイベントの準備や進行に尽力された東京大学国際本部の財津さん。楽しそうに歓談をしているところを撮らせていただきました。

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プリンストン大学の博士課程で電子工学を専攻するWarren Rieutourt-Louisさんと。東大Tシャツを着こなしています。本パートナーシップで、東京大学の染谷研究室に滞在していました。染谷研究室の学生もプリンストン大に来たそうです。

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左から、東京大学の江川雅子理事、プリンストン大学the Council for International Teaching and ResearchのJeremy Adelman理事、東京大学の羽田正副学長。Adelman先生はとってもきさくな方でした!

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濱田総長を囲んで、プリンストンの宇宙物理チームでパチリ。左から、プリンストン大学宇宙物理ポスドクの富田賢吾さん、留学生の村田さん、濱田総長、留学生の高木さん、プリンストン大学宇宙物理ポスドクの宮武広直さん。

佐藤仁教授、Prof. James Sturm、染谷隆夫教授が楽しそうに会話されているところに、お邪魔してみました。

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イベント後、宇宙物理学科の建物に、吉田直紀先生とProf. Jenny Greenの姿が。

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写真の撮影をお願いすると、研究にゆかりのあるSloan Digital Sky Survey(一世代前の大規模観測)の写真の前で、日本風にピースをしてくれました!

 

コメントとまとめ

イベントは全体的に親密で暖かい空気があり、質問や発言もあって、とても充実した時間でした。

濱田総長にこのイベントの感想を伺いました。「戦略的パートナーシップという言葉だけだと、漠然としたイメージしか沸かないかもしれません。今回、実際にイベントに参加して、ここまで教育も研究もしっかり噛み合っているんだと、嬉しい驚きでした。このパートナーシップには幅があり、きっと他の分野にも広がって行くだろうと、とても明るい印象を持ちました」。

学術推進支援室長の松本洋一郎理事にもお会いしました。アットホームな雰囲気でしたし、研究報告も面白かったですし、議論も盛り上がりましたね!とお伝えすると、「この締結はね、本当に一緒にやりたいと思って行動してくださった現場の先生方がたくさんいらしたから、うまくいっているんです。大学の本質でもある、強い研究者の姿が、このパートナーシップにはあります」と答えられ、こういう関係は長続きするんですと、おっしゃいました。

宇宙物理の研究をするプリンストン大学のProf. Green(ピースしていた女性の方)は「このパートナーシップは、私たちの共同研究を、パワフルで、そしてナチュラルなものにしてくれました」と話してくださいました。

学生にとっても、大きな利益があったようです。プリンストン大学博士課程のWarren Rieutourt-Louis(東大Tシャツ着てた方)さんは、東大の染谷研究室に滞在したことがあります。プリンストン大学では学べない部分をしっかり勉強でき、今の自分の研究に役立っているそうです。日本滞在はとても楽しかったそうで、今度行くときは日本語での授業にも出てみたいとのこと。欧米から物理的に離れ、なおかつ言語も異なる日本に、学生さんや若手研究者がやってくるのは大変なことだろうと思います。でも、こんな風に、一度でも滞在した経験があると、心理的な壁はずいぶん低くなるかもしれませんね。もちろん、逆に、日本の学生さんにとっても、海外で(しかもプリンストンは治安もいいし、有名な研究者がゴロゴロいるし、)過ごせるのは貴重な経験のようです。

人と人が協力して灯した明かりを、大学と大学が協力してもっと大きな火にしていくような、頼もしくて温かいパートナーシップでした。

両大学の間に培われた現在進行形の関係を見られただけでなく、未来への種がどんどん蒔かれているような、とても明るい印象を持ちました(あ、総長のコメントと同じ)。

 

UTokyo Dayの様子は、東京大学とプリンストン大学双方の大学ホームページでも紹介されています。

(東京大学・日本語)http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/topics/3175/

(東京大学・英語)http://www.u-tokyo.ac.jp/en/news/topics/3188/

(プリンストン大学)http://www.princeton.edu/main/news/archive/S41/40/83Q40/index.xml?section=topstories

 

南崎 梓@プリンストン

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