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学部生が行く,プリンストン大学短期留学

派遣学生からの報告(2014)

理学部物理学科4年 村田 龍馬

(支援共同プロジェクト「The Todai-Princeton Astrophysics Collaboration」)

私は,今年の9月末から約2ヶ月間,同じ物理学科4年の高木隆司君と「プリンストン大学との戦略的提携基金奨学生」として,プリンストン大学宇宙物理学科 (Department of Astrophysical Sciences, Princeton Univ.) に短期留学した。目的は,研究活動とセミナーを通して宇宙物理学を学ぶこと,およびプリンストンにいる研究者や学生たちと交流することである。私は,大学院で宇宙物理学を専攻するので,一流の研究者が集うプリンストンで宇宙物理学を学べることにとても興奮していた。

研究活動では,「弱い重力レンズ効果」解析の専門家である宮武広直博士研究員と宇宙背景マイクロ波観測の分野でとても有名なD.スパーゲル (David N. Spergel) 教授の指導のもと,「弱い重力レンズ効果」の解析方法を学び,解析プログラムを開発した。この「弱い重力レンズ効果」とは,アインシュタインが大きく貢献したことで知られる一般相対論から導かれる現象である。まず,大きな質量の周りの空間が歪められる。すると,その歪められた空間を光が通ると光の進む方向が曲がる。この結果,地球から遠くにある銀河が本来の形より少し歪んだ形になり観測される。逆にこの現象を使うことで,光の通ってきた空間にどれくらいの質量があるかが推定できる。お二人に丁寧なご指導をいただき,銀河の周りにある暗黒物質の質量を見積もることができた。帰国後も開発したプログラムを基礎として,研究の対象をさらに広げていきたい。近い将来にすばる望遠鏡で得られる見込みの高解像度データを,今回開発したコードを用いて解析するなどの研究を考えている。

研究活動と同時平行に,プリンストン大学宇宙物理学科,物理学科,およびプリンストン高等研究所でのセミナーに参加した。さまざまな分野の最先端の話題に触れることができたことは嬉しかった。また,一流の物理学者がセミナー中に活発に議論する姿はとても刺激的であった。その中で一番印象的だったのは,アドバイザーでもあるスパーゲル教授である。どのセミナーでもいつも中心となって盛んな議論をしていた。彼の研究とは離れている内容のセミナーでの議論でも,彼は活発に議論しており,幅広い興味をもっていると感じた。物理学者を目指すものとして,彼にとても憧れる。彼は私の研究活動報告のさいに「自分の研究分野だけでなく,他の宇宙物理学分野も知ろうとすることは大切だ。」とアドバイスしてくれた。その言葉を忘れず勉強と研究に励み成長し,いつか研究者として彼と議論したいと強く感じた。

宇宙物理学科では,数人のプリンストン大学の大学院生と友人となった。同世代の彼らと宇宙物理学について語ったのはとても楽しかった。彼らとは,将来一緒に研究する日が来るかもしれない。さらに,教授や博士研究員,およびすばる望遠鏡に関わっている研究者を訪問し,互いに研究内容を話したのは貴重な経験だった。近い将来,彼らと日本や海外で再会する日が待ち遠しい。

最後に,この素晴らしいプログラムを支えて下さっているすべての方々に感謝したい。とくに,アメリカでの生活をサポートしてくれたホストファミリーに感謝したい。

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Murata_2 アドバイザーのD.スパーゲル (David N. Spergel) 教授(右)と緊張している筆者(左)。物理学科にて

プリンストン大学での研究交流と地震活動共同研究

派遣学生からの報告(2014)

理学系研究科地球惑星科学専攻 博士課程 1年 西川友章

派遣期間: 2014年9/22~9/26

派遣先: Allan Rubin Laboratory, Department of Geosciences, Princeton University

(支援共同プロジェクト「Analysis and modelling of tremor and slow slip」)

2014年9月22日から9月26日までの五日間、地震活動解析、地震活動シミュレーション研究において優れた研究者であるAllan Rubin教授らと研究交流、地震活動共同研究に関する会議を行うため、プリンストン大学に滞在した。 

Allan Rubin教授の研究室では、現在、巨大地震発生帯周辺で発生する「非火山性微動」の新たな精密震源決定法の開発に取り組んでおり、今回の滞在では、その震源決定法のさらなる改良や、日本の南海トラフにおける新手法の適用やその有効性などのテーマについて活発な議論を行った。また、Allan Rubin教授の研究室が得意とする地震活動シミュレーションに関して、その理論やシミュレーションのソースコードの基礎的学習も行った。 

プリンストン大学の地球科学専攻には地震学のみならず、地球物理学、地球化学など多様な専門をもつ研究者が在籍している。今回の滞在中、研究セミナーを開催し、そのような他分野の研究者たちとも交流を行った。そのセミナーおける教授、学生らの自由で活発な議論、また熱心かつ楽しげな議論の雰囲気は非常に新鮮で刺激的なものであった。互いのアイディアを気兼ねなく、様々な学問的背景をもつ研究者と交換し共有することが、世界をリードする研究につながるということを実感した。 

また、プリンストン大学の素晴らしい研究環境も強く印象に残った。広大な敷地には、湖や森林、歴史ある建築物がならび、大学構内をリスたちが自由に駆け回っていた。大学のすぐ近くには、かつてアインシュタインが所属したプリンストン高等研究所もあり、まさにこのプリンストンという場所で、学問の歴史が作られてきたのだという感慨があった。滞在中には、プリンストン大学工学部に在学する友人とも会ったが、このような美しく歴史あるキャンパスにおいて、学問に静かに没頭できる彼を非常に羨ましく思った。 

プリンストンでは、様々な有意義な議論や学習を行うとともに、世界をリードする研究機関の研究環境や雰囲気を体験することができた。今回のプリンストン大学における滞在で得た貴重な知識や体験を糧として、今後も研究に取り組んでいきたいと思う。

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Princeton Univ.のすぐ近くにあるDelaware and Raritan Canalにて。写真左端がRubin教授、右端が西川。

プロジェクトからの報告(2014)

プロジェクトからの報告(2014)

平地健吾 数理科学研究科・教授

(支援共同プロジェクト「Joint Research Training in Pure and Applied Mathematics」)

 2014年秋から東京大学大学院数理科学研究科はプリンストン大学数学教室との共同・研究プロジェクトを開始しました.両大学の数学者の交流は小平邦彦先生(両大学の教授を歴任されました)の頃から長く続いていますが,大学院生の段階での交流は行われていませんでした.第一線の研究者の交流の活性化とともに学生も相互の大学から学ぶ環境を提供することを目標としています.

 プロジェクト初の会議としてプリンストン東京ワークショップ「Geometric Analysis」を2015年3月の第3週に開催しました.「Geometric Analysis」というのは幾何学の問題を微分方程式を用いて表現して研究する分野で,両大学で盛んに研究が進められています.(小平先生の調和積分論にも続くものです).今回は微分幾何のA. Chang教授とP. Yang教授,複素幾何のG. Tian教授がプリンストン大学のポスドク,大学院生をともに会議に参加されました.また両大学の大学院で学位を取得した世界で活躍する研究者もワークショップに招待し,合計27の研究発表と2つの入門的なミニコースが行われました.5日間の参加者は90名を超えました.

 2日目の夜には数理科学研究科で歓迎会を開催しました.偶然,R. Graham教授(プリンストン大学で学位を取得され現在はワシントン州立大学)の還暦祝いを兼ねることになり,大学院時代の友人のスピーチを含んだ大変和やかな会となりました.

 思い返せば,私がプリンストン大学を訪れるようになったのは京都で行われたシンポジウムで C. Fefferman教授に私の発表を聞いて頂いたのが始まりでした.今回はFefferman教授とともに共同プロジェクトのリーダーとなり,若手研究者を紹介し送り出す立場になりました.ワークショップでの研究発表を切っ掛けに大学院生の交流が始まることを期待しています.

プリンストン大学における滞在を終えて

派遣学生からの報告(2014)

工学系研究科電気系工学専攻 博士課程2年 松久直司

(支援共同プロジェクト「Sensing Skins, from Molecules to Smart cities」)

プリンストン大学に訪問し、互いの最新の研究について意見交換を行った。中でもSigurd Wagner教授、James C. Sturm教授の研究グループは、無機半導体薄膜トランジスタに関する研究を行っており、薄膜有機トランジスタの研究を行っている我々の研究と近く、活発な議論を行った。その中でどういう点で無機薄膜トランジスタが優れており、劣っているかを染谷研究室における有機薄膜トランジスタに関する研究と照らし合わせて理解することができた。この滞在がきっかけで共同研究として再度プリンストン大学を訪れる機会を得、非常に有意義な時間を過ごすことができた。

また、プリンストン大学では教員と学生が非常に密接に交流しており、研究室間の距離も近い点が非常に良いと感じた。本滞在が研究の在り方について考えるよい機会になったと思う。

最後に、プリンストン大の教員・学生の皆さんは非常に親切に我々を歓迎してくださった。ここで感謝を申し上げたい。

Matsuhisa

プリンストン大学にてProf. Sturm GroupのYasmin, Warrenと筆者

プリンストン大学での研究生活

プリンストン大学との支援共同プロジェクトに採択された「Sensing Skins, from Molecules to Smart cities」において、今春1ヶ月間留学をしてきた志立 錬さん(工学系修士2年)から報告書が届きました。

 

プリンストン大学での研究生活

工学系研究科電気系工学専攻 修士課程2年 志立 錬

派遣期間:2014年3月1日~2014年3月30日 (現地時間)

派遣先:Antoine Kahn Laboratory, Department of Electrical Engineering,

Princeton University

 

研究背景

私が所属している染谷研究室では、有機物を使った柔らかいエレクトロニクスの研究を行っています。有機物を使うことで、軽く、薄く、曲げることも可能な、落としても割れない電子回路が実現できます。従来の半導体は、硬い電子材料で作られてきました。そのため、電子機器は曲げることができず、落とせば割れてしまいました。しかしここ数年で、エレクトロニクスの薄型・軽量化のニーズは急速に高まってきました。薄くて軽いだけでなく、実用的であるための耐久性も求められ、更に近年では、使いやすさという観点から、より装着感が少ない人間との親和性も求められてきています。このような背景の中、プラスチックフィルムのようなフレキシブルな電子回路が注目を集めており、ウェアラブルな電子機器などに応用され始めています。しかし、もしも今より更に性能が高いデバイスが実現すれば、その応用範囲は格段に広がるはずです。そこで私は、デバイスの更なる性能向上を目指し、有機半導体にいろいろな材料を組み合わせることによって、今よりもより人間が使いやすいデバイスの実現に取り組んでいます。

有機半導体の性能を向上させるためによく用いられる手法の一つに、自己組織化単分子膜を使うという手法があります。これは、ある薄い膜を有機半導体の下に敷くことで有機半導体の性能が向上するというものです。我々は研究を進めていく中で、ある新しい化合物をこの自己組織化単分子膜として利用することにより、デバイスの性能向上に大きく貢献することを発見しました。しかし、この化合物は作られて間もないため、まだわからないことが多く、デバイスの性能向上メカニズムも不明のままでした。そのため、この化合物を様々な方法で評価する必要がありました。デバイスの性能を決める上でもっとも重要な評価指標の一つが、エネルギー準位と呼ばれる指標です。しかし、この化合物のエネルギー準位を評価するためには、専用の測定装置と解析技術が不可欠でした。プリンストン大学のAntoine Kahn教授の研究室は、エネルギー準位の測定技術に長けており、データ解析においては世界トップレベルの水準を誇っています。そこで、私は、この新材料を携え、プリンストン大学にて実験を行うことにしました。

Photo1(a) 筆者がプリンストン大学に派遣されている期間中、3月10日~13日の日程で、「プリンストン東大ワークショップ」が同大学にて開催されました。東大からは教員5名と、筆者を含めた大学院生11名が参加しました。研究発表や議論など、活発な交流が行われました。

Photo2(b) プリンストン大学の学生たちの前で研究テーマについて発表する筆者

Photo3(c) Antoine Kahn教授と研究面で連携関係にあるBarry Rand准教授とディスカッション中の筆者

Photo4(d) Antoine Kahn研究室で筆者が実験に使用した測定装置

 

プリンストンでの実験

物質のエネルギー準位を測定する方法はいくつかありますが、今回用いたのは物質に紫外線、X線、電子線を当てて、物質の振る舞いからエネルギー準位を計算する方法です。この測定には高い技術が求められるため、私はAntoine Kahn教授の研究室で、操作の手ほどきをいちから受けてきました。データ解析にはさらなる蓄積された知識や経験が必要でしたが、経験豊富なAntoine Kahn教授の研究室で教えてもらうことで、少しずつ習得していくことができました。これらの技術はAntoine Kahn教授の研究室でなければ得ることが難しいコツやノウハウばかりであり、少なからず苦労もありましたが、一つひとつ身につけていくという作業は、非常に有用な時間でした。一連の実験の結果、新しい化合物は特殊なエネルギー準位を持つことがわかりました。ユニークな特性が解明できたことは、今後デバイスの性能向上を図るうえで、重要な知見となるはずです。

プリストン大学の研究

プリンストン大学では、一つ一つの研究室の規模は大きくありません。しかし、それぞれが高い専門性を有した少数精鋭の集団となっており、横の連携が強く、交流が盛んでした。研究室内のミーティングはもちろん、連携先とのディスカッションもあり、そこでは最新の研究情報の交換や議論が活発に行われていました。誰かが話しているのを聞くという一方通行なスタイルではなく、教授も学生も熱い議論を交わす形をとっていました。矢継ぎ早に質問が出たり、アイディアが提案されたりするなど、スピーディーかつインタラクティブな内容で、誰もが情熱を持って真摯な姿勢で研究に取り組んでいることが、ひしひしと伝わり、圧倒されました。世界中から集った素晴らしい研究者が、それぞれの専門性や個性を武器に、多様性を生かしたチームプレーを発揮していました。将来研究者としてグローバルに活躍したいと願う自分にとって、そうした研究者たちの姿を目の当たりにしたことは、在外研究ならではの醍醐味であり、大きな刺激でした。

アメリカの大学で一ヶ月という期間、研究活動を行うということは、自分ひとりの力では到底成し得ないことでした。修士課程一年生という早い時期に、プリンストン大学という世界でも最先端の研究を行っている大学に派遣していただいたことは、本当に貴重な経験でした。派遣前には、この貴重な機会を決して無駄にすまいと、そして、より充実した研究活動を現地で行うことができるようにと、入念に準備を行いました。現地では当初は不慣れな面もありましたが、Antoine Kahn先生の丁寧なご指導と研究室メンバーのサポートにより、順調に実験を進めることが出来ました。帰国した現在も、研究交流は続いており、今後も情報交換や共同研究を進めていく予定です。今回の私の派遣期間は一ヶ月でしたが、準備期間と今後の活動を含めれば、プログラムにより私が享受したものは、それ以上のものでした。この経験を糧に、今後も弛まず研究を進めていきたいと思います。

最後に

「プリンストン大学との戦略的提携基金」プログラムにご支援ご協力いただいた皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

UTokyo Day at Princeton University

東京大学・プリンストン大学の戦略的パートナーシップ締結の記念イベント「UTokyo Day」が、2014年10月23日にプリンストン大学にて開催されました。

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イベントが開催されたのは、食堂でおなじみのFrist Campus centerの隣にある、Jones Hallという建物でした。アインシュタインが居室として使っていたという部屋もある、素敵な場所なんです。

しかも!この日はしとしと雨降り。雨で黒っぽくなった石造りの建物に、赤や黄色の紅葉がよく映えて、しっとりとした風情ある景観になりました。寒かったけど。

あぁ、しかし、この日のイベント会場には、暖かい空気が満ち満ちて、寒さなんて吹き飛ばされてしまいました。

 

まずは真面目にイベントレポート

イベントでは、締結に関わった役員と研究者の先生方が一堂に会し、スピーチや研究報告がなされました。

プリンストン大学Eisgruber学長のスピーチでは、東京大学との関わりが古くからあったことが触れられました。プリンストン大学のEd Turner教授や東京大学の須藤靖教授などのお名前を挙げながら、これまで様々な研究者たちの努力で両大学のつながりが続けられていたことが話されました。天文学の分野で共同研究が始まったのは、なんと30年前のことだそうです!

こんな風に学長自らが、具体的な例を交えつつ東京大学との関わりを紹介することに少なからず驚き、プリンストン大学の心からの歓迎の気持ちを感じました。

東京大学からは、濱田総長が東京大学の学事歴やカリキュラムに関する大胆な変更について話し、江川理事からはその詳しい説明や、それ以外の国際化に向けた取り組みの紹介がありました。世界で活躍するタフな東大生を育てる準備が、着々と進められていることを感じました。

ブレークタイムを挟んで、本パートナーシップが支援する3つの共同研究・教育プロジェクトについての進行状況報告もありました。1つのプロジェクトごとに、東京大学の研究者とプリンストン大学の研究者が一人ずつ分担して報告をしました。

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【第一回採択プロジェクト 3 件より進行状況報告】

 

代表者 東京大学/プリンストン大学

プロジェクト

  

染谷 隆夫教授(工学系研究科)/Prof.   James Sturm (Inst. for the S & T of Materials)

Sensing   Skins, from Molecules to Smart Cities

 

吉田 直紀教授(理学系研究科)/Prof.   Jenny Greene (Dept. of Astrophysical Sciences)

The   Todai-Princeton Astrophysics Collaboration

 

佐藤 仁教授(東洋文化研究所)/Prof.   David Leheny
  (East Asian Studies Dept.)

Toward   Immersive Asian Studies:
  A Collaborative Undergraduate Exchange Program for the Todai- Princeton   Partnership

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(1)染谷隆夫教授(東大)、Prof. James Sturm(プリンストン大)のプロジェクトは、「Sensing Skin」という、1マイクロメートルのものすごい薄くて軽いフィルム上作られた電子回路の開発でした。羽毛よりも軽く、くしゃくしゃにしても大丈夫。その特性を活かして、人の手の甲や、建物などに貼り付けることができます。東京大学のロボットスキンの研究と、プリンストン大学の伸縮する金属の研究が出会って生まれた新しい技術だそうです。1マイクロメートルとは、1000分の1ミリメートルのこと。髪の毛の太さが大体0.1ミリメートルなので、髪の毛の100分の1くらい、ということでしょうか。薄いな。こんな所に緻密な(しかも伸び縮みする!)電子回路が構築できるとは。

(2)一方、吉田直紀教授(東大)、Prof. Jenny Greeneが挑戦しているのは、ものすごく大きいもの、ずばり、宇宙の国勢調査!これまでにない大規模な観測を行い、宇宙全体の性質を統計的に調査します。一つ一つの星や銀河ではなく、全体を見渡して初めて見えるものとは何でしょう。それは、宇宙そのものの歴史です。遠くを見れば見るほど過去の宇宙の姿が見えるので、広く&遠くまで観測することによって、宇宙全体がどんな風に膨張してきたかを調べ、そこから、宇宙全体を支配するルールを見出そうとしているのです。このプロジェクトでは、日本の技術が結集したハワイのすばる望遠鏡が使われています。

(3)佐藤仁准教授(東大)とProf. David Leheny(プリンストン大)の教育プロジェクトでは、「immersive(没入した)」なパートナーシップを実現するため、教員が互いの大学で授業を行うという取り組みが行われています。これには、佐藤先生の実体験が元にあります。以前プリンストン大学に出張にきた時、プリンストン大学がどのように機能しているのかは、ただ滞在しただけの時にはわからず、ある時プリセプト(講義とは別に、小グループで議論をする授業)に参加させてもらって初めて理解できたと感じたそうです。深いパートナーシップ実現の鍵は「teaching」である、ということでした。この二人は、まるで漫才コンビのように軽妙なトークで、息もぴったり!あぁ、immersiveな交流がなされているんだなぁ、という感じでした。

会場ではそのまま、より深いパートナーシップの実現や日本の学生がもっと積極的に発言するにはどうしたらよいかなどの議論が始まり、活発な意見交換がなされました。

 

 

イベント以外の時間のレポート

ブレークタイムや、イベント終了後の会場は、さらにフレンドリーな雰囲気でした!

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左から、東京大学から本パートナーシップにより、Astrophysical Sciences(宇宙物理)に留学している村田君と高木君、そしてイベントの準備や進行に尽力された東京大学国際本部の財津さん。楽しそうに歓談をしているところを撮らせていただきました。

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プリンストン大学の博士課程で電子工学を専攻するWarren Rieutourt-Louisさんと。東大Tシャツを着こなしています。本パートナーシップで、東京大学の染谷研究室に滞在していました。染谷研究室の学生もプリンストン大に来たそうです。

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左から、東京大学の江川雅子理事、プリンストン大学the Council for International Teaching and ResearchのJeremy Adelman理事、東京大学の羽田正副学長。Adelman先生はとってもきさくな方でした!

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濱田総長を囲んで、プリンストンの宇宙物理チームでパチリ。左から、プリンストン大学宇宙物理ポスドクの富田賢吾さん、留学生の村田さん、濱田総長、留学生の高木さん、プリンストン大学宇宙物理ポスドクの宮武広直さん。

佐藤仁教授、Prof. James Sturm、染谷隆夫教授が楽しそうに会話されているところに、お邪魔してみました。

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イベント後、宇宙物理学科の建物に、吉田直紀先生とProf. Jenny Greenの姿が。

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写真の撮影をお願いすると、研究にゆかりのあるSloan Digital Sky Survey(一世代前の大規模観測)の写真の前で、日本風にピースをしてくれました!

 

コメントとまとめ

イベントは全体的に親密で暖かい空気があり、質問や発言もあって、とても充実した時間でした。

濱田総長にこのイベントの感想を伺いました。「戦略的パートナーシップという言葉だけだと、漠然としたイメージしか沸かないかもしれません。今回、実際にイベントに参加して、ここまで教育も研究もしっかり噛み合っているんだと、嬉しい驚きでした。このパートナーシップには幅があり、きっと他の分野にも広がって行くだろうと、とても明るい印象を持ちました」。

学術推進支援室長の松本洋一郎理事にもお会いしました。アットホームな雰囲気でしたし、研究報告も面白かったですし、議論も盛り上がりましたね!とお伝えすると、「この締結はね、本当に一緒にやりたいと思って行動してくださった現場の先生方がたくさんいらしたから、うまくいっているんです。大学の本質でもある、強い研究者の姿が、このパートナーシップにはあります」と答えられ、こういう関係は長続きするんですと、おっしゃいました。

宇宙物理の研究をするプリンストン大学のProf. Green(ピースしていた女性の方)は「このパートナーシップは、私たちの共同研究を、パワフルで、そしてナチュラルなものにしてくれました」と話してくださいました。

学生にとっても、大きな利益があったようです。プリンストン大学博士課程のWarren Rieutourt-Louis(東大Tシャツ着てた方)さんは、東大の染谷研究室に滞在したことがあります。プリンストン大学では学べない部分をしっかり勉強でき、今の自分の研究に役立っているそうです。日本滞在はとても楽しかったそうで、今度行くときは日本語での授業にも出てみたいとのこと。欧米から物理的に離れ、なおかつ言語も異なる日本に、学生さんや若手研究者がやってくるのは大変なことだろうと思います。でも、こんな風に、一度でも滞在した経験があると、心理的な壁はずいぶん低くなるかもしれませんね。もちろん、逆に、日本の学生さんにとっても、海外で(しかもプリンストンは治安もいいし、有名な研究者がゴロゴロいるし、)過ごせるのは貴重な経験のようです。

人と人が協力して灯した明かりを、大学と大学が協力してもっと大きな火にしていくような、頼もしくて温かいパートナーシップでした。

両大学の間に培われた現在進行形の関係を見られただけでなく、未来への種がどんどん蒔かれているような、とても明るい印象を持ちました(あ、総長のコメントと同じ)。

 

UTokyo Dayの様子は、東京大学とプリンストン大学双方の大学ホームページでも紹介されています。

(東京大学・日本語)http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/topics/3175/

(東京大学・英語)http://www.u-tokyo.ac.jp/en/news/topics/3188/

(プリンストン大学)http://www.princeton.edu/main/news/archive/S41/40/83Q40/index.xml?section=topstories

 

南崎 梓@プリンストン

プリンストン大学留学についての報告

昨年、プリンストン大学との支援共同プロジェクトに採択された「The Todai-Princeton
Astrophysics Collaboration」において、2ヶ月間留学をしてきた朱さん(理学系修士1年)から報告書が届きました。

プリンストン大学留学についての報告

理学系研究科物理学専攻 修士1年 朱 えい東

時間がたつのは早く、プリンストンに行ったのはもう一年前のことになってしまった。しかし、あの2ヶ月弱の滞在は色褪せることなく鮮明に私の頭の中に刻まれている。体験の全てを細かく述べることはできないが、いくつかもっとも印象に残ったことについて記したい。

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まずはホストファミリーの一家が本当に熱心で、私たちの面倒をよく見てくれた。滞在が正式的に始まる前にキャンパスの下見や、アインシュタインが昔住んでいた屋敷、その他いろんなところに連れてくださり、詳しく歴史話などしてくれた。プリンストンの有名なアイス屋さん、有名なレストランでもいろいろごちそうになったりした。彼らはアメリカの文化的側面に私たちに触れてもらおうという心は非常に強くて、アメリカンフットボールを皆で見に行くとか、Mr. BeanのコメディやA Beautiful Mindを一家で見るようなイベントを企画してくれたり、ハローウィンやThanks Givingの雰囲気に味わえたり多くのことをしてくださった。また私が体調を崩したときに薬局にわざわざ特別な薬を買ってくれたこと時は感激した。

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大学の方では、宇宙科学学科全体に活発で研究を楽しめるような雰囲気だった。毎朝10時半から定例会があって、分野を問わず全学科の人が集まって、その日インターネットに投稿された論文についての情報を分かち合う。みんなから満々なやる気が感じられて、わからないことがいっぱいだけれども、若い私たちには大きな刺激であった。他にも多くのイベントが組織されていて、ランチを食べながらも研究に関する最新の情報がどんどん入ってくる。高等研究所に近いから大学と研究所両方のセミナーに参加でき、世界中の優れた頭脳の間の研究議論が聞けて、時折自分が完全に圧倒された感じもした。

プリンストンの授業は少し東大のものと違う気がした。私は一般相対論の授業だけ聴講した。私たちは一般相対論の授業を東京大学で受けたことがあるから、それほど新しいことというわけではなかったが、復習も兼ね、また英語の聞き取り練習もできたため、必ず授業に参加するようにしていた。宇宙科学科の講義とは言えども数学的な側面が重視され、簡潔かつ厳密な証明できれいにいろんな命題が証明されていくこともとても感心だった。授業はスライドでやっていたが、Blackboardというウェブサイトを通して、スライドを学生に配ったり、宿題を出したりするわけである。授業のスピードは少し早めで、最初に一般相対論を習う際には少し流している感じもするけど、宿題の量はかなり多く、放課後きちんと復習しないと解けない問題ばかりで、むしろ課外時間を利用してしっかり基礎づけてもらっている。

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プリンストンでのポスドクの日本人先輩たちも丁寧に私たちの勉強や生活面で助けてくださった。研究員の杉山さんは私の研究のわからないところについていろいろ教えてくれた。同じく研究員の富田さんは私たちを連れてニュージャージー州にあるCMB(宇宙背景放射)を発見した当時に使われていた望遠鏡を一緒に見に行ったし、ノーベル賞受賞者の講演会に連れていてくれたこともある。私は富田さんに将来研究者になるためのアドバイスなどを求めたこともある。

滞在中に私の指導教員を引き受けてくださったSpergel先生が忙しい中でも毎週時間を設けて会ってくださったことなど、そして全般的面倒見をしてくださった東京大学の吉田先生などの支えにも感謝したい。

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ひとつだけ、少し後悔していることは、プリンストン大の学生たちと十分に交流を深められなかったことである。やっていた研究分野はだいぶ違うため、共通の話題も少なかった。私はプリンストンの学生たちに誘われて、彼らのthunchというお昼の活動に参加した。ほぼ毎週あるこのイベントは学生たちだけで運営されていて、毎週の木曜日にランチを食べながら、いろいろ有名人を招待して、面白い話をしてくれるという企画である。私も忙しかったし、専門外の英語が完全に聞き取れていたわけでもないので、7週間あまりの滞在の間に2回しか参加しなかった。プリンストンの学生たちは私たちに熱心に接してくれたが(クリスマスに合唱のイベントがあって、誘ってくれたが、もう帰ることとなった)、少し照れ屋の私はチャンスを掴めなかった。

現在私は素粒子物理学、主に弦理論の研究をしているので、プリンストンでやっていた研究とはテーマを変えてしまったが、当時覚えたそのわくわく感や刺激は今でもやる気の出る最大の源の一つになっている。そして、最近弦理論でのある種の問題は宇宙のダークマターと似たような計算で解決できるではないかと気づいたことさえあった。私にとってこの2ヶ月の滞在は実に思い出と収穫の多いものだったとつくづく感じている。

プリンストン大学留学体験記

昨年、プリンストン大学との支援共同プロジェクトに採択された「The Todai-Princeton Astrophysics Collaboration」において、2ヶ月間留学をしてきた大里さん(理学系修士2年)から報告書が届きました。

 

プリンストン大学留学体験記

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修士課程一年 大里 健

 

 2013年9月から11月までの二ヶ月間プリンストン大学天体物理学科(Department of Astrophysical Sciences, Princeton University)に交換留学生として滞在した。プリンストン大学は筆者が専攻とする宇宙物理学を始め、特に物理学、数学の分野において世界のトップに位置する教育機関でもあったので、留学する以前から興味を寄せていた。その上、筆者にとって「留学生」として海外の大学を訪れるのは初めてであったので、多くの有意義な経験をさせていただいた。

 現地における大学生活は、宇宙物理学を学ぶ者としては非常に刺激的な毎日であった。天体物理学科においては、宇宙物理学における第一線の研究者たちが大学に訪れ、自身の研究を発表するセミナーがほぼ毎日開催される。最新の研究内容を基に議論が行われるセミナーは、日本にいたときには体験出来なかったもので、とても新鮮であった。そしてこの二ヶ月間、Eve C. Ostriker教授と富田賢吾博士研究員の指導の下、星形成領域における磁気流体シミュレーションに関する研究を行った。先生方は未熟な筆者に一から丁寧に指導してくださり、彼らと交わした議論から得た知識はこれからの自分の研究生活において礎になると確信している。

 この留学において最も印象に残ったのは、やはり学科における先生方と学生たちである。天体物理学科のあるPeyton Hallでは、毎朝9時になると一斉に教室中の人々が一階のホールに集合する。毎日インターネット上で最新の論文が発表されるため、その中でも興味深い論文を取り上げて議論するためだ。もちろんその際にはコーヒーを欠かさない。驚いたのは、宇宙物理学の分野において権威ある先生方と学生が活発に議論を交わしている姿であった。研究に取り組む真摯な姿勢を感じ、研究者を目指す自分にとって良い刺激となった。

 天体物理学科に留まらず、プリンストン大学の環境にも非常に感銘を受けた。プリンストン大学は1746年に設立され、一時は国会が設置されたこともある歴史的な場所でもある。歴史を感じさせる建物の中、近代的な図書館もありつつ、調和のとれた風景が広がっていた。自然も多く、落ち着いて研究に取り組むことの出来る環境であった。プリンストンという街そのものの中心がプリンストン大学であり、市街地も大学周辺に位置している。大学から数分も歩けば住宅街と森が広がっている。折しも筆者が訪れた頃は秋から冬への変わり目であったので、紅葉が美しく、時には鹿が道路を歩いているのにも出くわした。また、大学の近隣には、かのアインシュタインが過去に在籍していた高等研究所(Institute for Advanced Study)もあり、筆者もセミナーを聴講するため何度か足を運んだ。まさにプリンストンにある研究機関が街と一体化しており、一つの巨大な学術都市をなしていた。

 初めての海外での生活ということで、最初は英語でコミュニケーションできるかなど不安も多くあったのも事実である。しかしながら、様々な人々の助けもあり、アメリカに到着してすぐにそのような不安もなくなり、研究活動に集中することが出来た。二ヶ月という短い期間ながら、この留学を通じて学んだことは数え切れない。いつの日か再びプリンストンを訪れたいと心から思える、とても貴重な留学経験であった。

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Peyton Hallの前にて。左から富田賢吾博士研究員、筆者、Eve C. Ostriker教授

2014年度共同プロジェクト採択結果

2014年2月27日に以下4件の共同プロジェクトが助成対象として採択されました。

1.井出 哲 教授(理学系研究科)/Prof. Allan Rubin(Dept of Geosciences)

プロジェクト:Analysis and modelling of tremor and slow slip(1年間の助成)

 

2.平地 健吾 教授(数理科学研究科)/ Prof. Charles Fefferman (Dept of Mathematics)

プロジェクト:Joint Research Training in Pure and Applied Mathematics(3年間の助成)

 

3.小野 靖 教授(新領域創成科学研究科)/ Prof. Stewart Prager (Director, Princeton Plasma Physics   Laboratory)

プロジェクト:Educational Collaboration and Workshop for Plasma Physics and Fusion(3年間の助成)

 

4.小渕 祐介特任准教授(工学系研究科)/ Prof. Jesse Reiser (Architecture)

プロジェクト:Meet the Authors: Cross-Cultural Analysis on Architectural Writings(3年間の助成)

 

※次回は、2014年9月半ばより新たに助成する共同プロジェクトの公募を開始し、審査を経て2015年2月末に採択する予定にしています。

 

2013年度プリンストン大学との戦略的提携基金からご報告

〈共同プロジェクトに対する助成〉

2013年6月14日に以下3件の共同プロジェクトが助成対象として採択されました。

1.染谷 隆夫教授(工学系研究科)/Prof. James Sturm(Inst. for the S & T of Materials)

 プロジェクト:Sensing Skins, from Molecules to Smart Cities(3年間の助成)

 

2.吉田 直紀教授(理学系研究科)/ Prof. Jenny Greene(Dept. of Astrophysical Sciences)

 プロジェクト:The Todai-Princeton Astrophysics Collaboration(3年間の助成)

 

3. 佐藤 仁准教授(東洋文化研究所)/Prof. David Leheny(East Asian Studies Dept.)

 プロジェクト:Toward Immersive Asian Studies:A Collaborative Undergraduate Exchange Program for the Todai-Princeton Partnership(3年間の助成)

 

成果報告

1.染谷/Sturm

Princeton-Todai Mini-workshopを2014年3月20日~25日にプリンストン大学で開催した。東大からは、教員5名、大学院生11名が参加した。

東京大学工学系研究科の学生(修士課程1年)がプリンストン大学にて在外研究に1か月従事した。新しい自己組織化単分子膜の光電子分光によるエネルギー準位の評価を行い、ユニークな特性を得た。

プリンストン大学電気工学科の学生(博士課程)が5月4日より2か月東大にて共同研究に従事している。

 

2.吉田/Greene

助成により、2ヶ月間の学部学生交流を実現している。
2013年9月-11月に東大理学部物理学科4年生 大里健さんと朱えい東さんがプリンストン大学宇宙科学科に滞在し、宇宙物理学の研究をすすめた。
それぞれ派遣先の教員および研究員らと共同研究し、磁気回転流や宇宙のダークマターについての新たな知見を得た。
2014年9月-11月にも東大理学部物理学科4年生を派遣予定で、選考された2名は渡航準備をすすめている。
今後、2015年5-7月, 2016年5-7月にプリンストン大宇宙科学科の学部学生3年/4年生を数名受け入れ、また2015年9月-11月にも東大理学部物理学科4年生を派遣する予定である。

3.佐藤/Leheny

2014年2月初めよりプリンストン大学にてカウンターパートの教授と共同で授業を開講。Dilemmasof Development in Asiaというタイトルで、東アジア学部の学生だけでなく、理科系を含む多くの学部から60名程度の受講者を集めることができ、East Asian Studies Departmentの歴代開講科目の中では屈指の人気授業として走り始めることができた。プリンストン大学のレヘニー教授が6月16日から駒場で集中講義を実施した。

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